ここまでに、「中古車はエコロジー」であるという3つの仮説を立てたのでおさらいしてみましょう。

果たしてこれは本当でしょうか。専門家の意見を聞いてみましょう。伺ったのは、東京大学大学院 新領域創成科学研究科の吉田准教授と、日本総合研究所総合研究部門地球温暖化対応戦略クラスターの三木主任研究員です。
- 【Q.】
- 中古車を選ぶことでCO2排出を3~6t削減できますか?また、10万Km程度走行するまでは、中古車の方がCO2排出量が少ないのでしょうか?
- 【吉田氏】
- 「CO2の排出について、この仮説の考え方は間違っていないと思います。条件のよい中古車であれば、適正な距離まで走ったほうが環境に良いでしょう。自動車が車体製造までに排出するCO2は、燃費10km/Lの車で全体の10%~20%程度、が標準的な数値だと考えています。」
一方、三木氏はトヨタの資料を基にした日本自動車工業会のデータから、製造時におけるCO2排出量を算出しました。これによると、「通常の車」が1.89t、「ハイブリッド車」が2.26t。計算方法は仮説と同じですが、実際の排出量はやや少ないようです。
この値を、先の走行距離とCO2排出量のグラフに当てはめると、中古車は3万kmと少しで新車のハイブリッド車を追い抜いてしまいます。ただし、「プリウスの実燃費は20数km/Lで、実際は中古車の方がCO2排出が少ない距離がだいぶ長くなります」といいます。「長い距離を乗らないのなら中古車を買おう」というのが三木氏のスタンスです。

なお、吉田氏によるとCO2以外にもエアコンなどに使用されるフロンも考慮する必要があるといいいます。「含まれているガスの成分にもよって異なるので一概には言えませんが、フロンは同じ重量のCO2と比べて1000倍以上の温室効果があります。古くなった車のフロンが自然に漏れるようなことがあると、環境負荷は非常に大きくなります」(吉田氏)
平成8年まではオゾン層を破壊する「CFC」というフロンが使われていました。現在は、ほとんどの車種で代替フロンと呼ばれる「HFC-134a」が使われています。HFC-134aはオゾン層の破壊効果は低いものの、温室効果はCO2の1430倍にものぼります。
取材した複数の中古車販売店によると、部品の経年劣化などでエアコンのガスが漏れるため、交換するケースも実際にあるといいます。ガス漏れを防ぐには、こまめな点検で不具合をいち早く見つけるしかありません。
- 【Q.】
- 中古車を選ぶことで自動車1台あたりに必要な約500~1200kgあまりの鉄資源を節約につながらないでしょうか?
- 【吉田氏】
- 「鉄資源に関しては、100%リサイクルされていると考えるのが妥当です。車のボディには使われないでしょうが、建築資材として使用されるケースが多いです。自動車の鉄が捨てられて、無駄になることはまずありません。」
- 【三木氏】
- 「自動車の鉄が必ずしも自動車にリユースされているかわかりませんが、社会全体で見れば、鉄資源のロスはないでしょう。」

仮説と専門家の意見を踏まえると、以下のとおりに結論を出すことができます。
自動車を1台製造する際に、一般的なガソリン車で約2~3tのCO2を排出すると推測されます。中古車を選べば、購入時点において同じ量のCO2排出を削減したことになります。
仮に、新車を買っていた人の1割がCO2排出などを考慮し中古車を選んだとすると、2007年は約44万台の生産を抑え、88~132万tものCO2排出削減につながります。これは樹齢50年の杉の木6300~9400万本が1年間に吸収するCO2に相当します。
一方、自動車に使われる鉄鋼は、廃車後もほぼ100%リサイクルされるので、中古車を選んで新車の製造を減らしても、社会全体で見れば資源のロスにはほとんど結びつかないようです。


